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ふたりの、カタチ♡ (2023-04-21 14:16 更新)

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ふたりの、カタチ♡

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 鈴木霧江すずき・きりえ田中万里枝たなか・まりえ

 同じ高校の美術クラスで。

 

 一年一学期の名簿順の班で知り合って。

 なんだか名前も似ているし、自然に仲良くなって。

 

 どちらもそれぞれアート系のプロを目指して東京へ進学することになったので、

 経済的な理由からルームシェアで同居を始めたのは自然な流れで。

 

 そこから数年、すれ違いのまま多忙な学生時代を過ごして、

 さらにまた数年、忙しさが倍化する社会人生活のなかでも、

 ムリしてでも、同居を、

 続ける、理由は…?

 と、

 お互いの胸に、問いあううちに、

 

 クールな同居は、

 恋情と性愛を伴う、同棲になって。

 

 そこからまた数年。

 同性パートナー登録をして、

 うちうちで、お祝いもして。

 

 すれ違い生活と、喧嘩と仲直りを繰り返しながらも…

 らぶらぶ、とお互いに認識していたが。

 

       ☆

 

 新興アパレルメーカー所属の、

 気鋭の新人デザイナー兼パタンナー

 品質向上技術指導員として、

 その優れた交渉力と語学力も買われて、

 海外工場への出向を命じられたマリエが。

 

 希望すれば。同性といえど公式登録も済ませた大事なパートナーを、

 家族として伴う費用は出すよ?

(さいわい、向こうの国のほうが、理解があるくらいだし!)

 と、会社からは言われたが。

 

「…ムリ。やっと構えた、あたしのアトリエは、その間、どーするのよ?」

 

 いちおう、と、おそるおそる打診してみたマリエへの、

 キリエの返事は、約30秒間ほどの沈思黙考の後の…

 ほぼ、即答だった。

「来年の、個展の準備だってあるし…」

 

「…ですよね~…★」(半泣き)

 

 ここで、「シゴトとアタシと、どっちが大事なのよ?」

 とかいう、定番の痴話げんかを始められるほどには。

 ふたりの、お互いに対する理解と愛情は…

 浅くはなかった。

 

       ☆

 

 数日間の苦悩と煩悶の後。

「数年間、別居になるけど、待っててくれる?」

 と、お伺いをたてたマリエに。

 キリエは、

「時間がとれたら、遊びに行くから泊めて?」

 と、すでに色々調べた、むこうの国の美術館や。

 遺跡やら工芸品アトリエのマップを並べて…

 にやりと微笑んだ。

 

     ☆

 

 しかしながら出発間際まで往生際が悪かったのは、出ていくマリエのほうで。

 長年、同居と同棲を続けてきた思い出ぶかいアパートを引き払う準備をしながら…

(家賃節約のため、キリエはアトリエの2階に寝泊まりして、

 マリエが持って行かない荷物は、戻ってくるまで、

 隣の格安倉庫に突っ込んでおく、ということにしたのだ。)

 ぐずぐずと。

「…写真はもちろんたくさん撮ってあるけど!

 …そんなに長い間、キリエを抱きしめられないなんて~ッ!!」

 

 当のキリエから「だっこ魔!」と、

 けむたがられている、マリエである。

「…だきしめたい… うぇぇえん… キリエぇぇぇ~!」

 と、ぐずったあげくに。

 ふとキリエが気がついたら。

 

【 特注 抱き枕 】とやらのメーカーに。

 キリエの全身(ほぼ裸身)の画像を!?

 送りつけようと、しているではないか…!

 

(そこで数日間の、苛烈にしてバカバカしい痴話喧嘩が、くり広げられた、わけだが…)

 

     ☆

 

「…そんなに抱っこしたいなら、縫いぐるみとかで良ければ、アタシが創るけど…?」

 ほぼ裸身画像をあかの他社のエロ用メーカーに勝手に送信されるくらいなら、と、

 最後には、キリエが折れた。

 

「…え? ほんと? できるの??」

「陶芸と木彫にハマる前、中学ん時は、

 美術部は絵を描く人ばっかしだったんで、

 手芸部で立体モチーフとか?

 布人形とか、創ってたから…」

 

「つくってぇ! お願いぃ♡」

 

「…なんの因果で、自分で自分の等身大ぬいぬいを…★」

 

 などと、アホな会話をしながらも。

 

 写実的な立体木彫と、前衛的な陶芸アートで、

 ぼちぼち売れ始めているキリエは。

 その場で、模造紙を取り出してきて。

 自分のからだをマリエに採寸させながら。

 あっという間に、型紙は作り上げたが…

 

「…すごい、キリエ! うちのパタンナーにスカウトしたい…!」

「…木彫りが売れなくなったら考える~w」

 

     ☆

 

 さて問題は。

 等身大の、りあるタッチの、女性の。

 半裸身の、布人形を。

 どうやって、飛行機に、持ち込んで、運ぶのか…???

「…チェロ奏者、とかは、隣の座席をもひとつ借りるって~」

「…ちょっと、いやよ? なかみ、検査されるのよ?

 なんて言い訳する気?」

「南極2号♡」

(…また、枕とかゲンノウとか飛び交う騒ぎが数日…)

 

     ☆

 

「ほい。」

 と、ミシンをかけ、刺繍糸の束で髪の毛を作り、

 刺繍とビー玉で「うわ~!そっくり!♡」に作った、

 自分自身の「縫いぐるみ』の…

 ぺらっとした状態の、皮を。

 キリエは、ぽいと、手渡した。

「中身なしの、ガワだけ丸めて、下着ケースに詰めてきゃ、検査はされないでしょ~w」

 と、難事件を解決した名探偵のようなドヤ貌で、笑った。

「…あっ! ホントだ~♡」

「衣料会社なんだから、向こうで綿くらい簡単に手に入るでしょ?

 詰めかたはね。こう。背中のジッパー開けて~」

「きゃあ、エロい♡」

「どこがッ?★」

 なんて、じゃれながら。

 ほんとにワタを詰めると、出すのが大変になるから…と、

 代理で。丸めた新聞紙とかをがしがし詰め込んで。

 だいたいの輪郭まで膨らませたソレは。

「…ん~♡ 抱き心地、大きさ、そっくり♡」

 と、マリエを嬉しそうな顔にさせたので…

 

 まぁ、恥を忍んでアホな苦労をした甲斐はあったかな、と、

 キリエも溜飲をさげたのである。

 

     ☆

 

 後日。

 向こうの国の、社費で借りたゆったり高級アパートで。

 取引先の仲良くなったバイヤーさんなんかを集めての、

 飲み会で。

 マリエは得々として、キリエ人形♡を披露した…

(むろん、そちらでお土産用に買った、『ぜったいキリエに似合いそうな服!』を、

 ちゃんと着せた、状態で、だったが…)

 

 衣料品販売会社の。

 質の良いマネキンの調達に、まさにそのとき苦労していた社長が…

 喰いついた。

「これ! 量産してッ!?」

「えぇぇ?」

「オーダーメイド専用の、ハイソなお客様がたにそっくりなやつと!

 高級オートクチュール用の! 女性が憧れる女性、のイメージで!」

 

     ☆

 

 マリエとキリエと本社と支社と、各地の工場の間で、

 指示と図面と連絡が飛び交い…

 

 気鋭のアパレルメーカーは。

 エコでノンプラな『布製マネキン』製造分野にも、

 勇躍、手を広げ。

 

 そして各種の素材も試されて…

「環境にやさしい!」

 布製マネキンが。

 数年後には、世界の主流に、なったのである。

 

 めでたし、めでたしw

 

     ☆

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【 ものづくり 】の【 ゆめがたり 】
『 M.M.M. 』‐ Making Materials Mania ‐
霧樹 里守 (きりぎ・りす)
空想科学
ものづくり / 商品開発 / 創作 / 制作 / 製造 / 夢 / ファンタジー / サクセス
文量:軽め / 連載中 全3話
2023-04-21 14:16 更新

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