===============
ままよ! れどねーず!
===============
☆
口コミが口コミを呼び、連日の行列で。
画像や感想はネット上を飛び交った。
ほとんどの時間、イートインの座席は6~8割以上は埋まっていたし。
朝の出勤前と、昼食時と夕食時には。
清算レジ前の長い行列、とはまた別に、
空席待ちも、かなり長い行列になって。
せっかく来店してくれたお客様が、長い行列を見て、諦め顔で引き返して去ってしまう…
なんていう、嬉しくも哀しくも、もったいなくもある、状況が、日常と化してきた。
経営陣は、しばし考えた。
(…店内で、ゆっくり。
美味しく、楽しんで、食べて頂いている
お客様を。
慌ただしく、追い立ててまで
【回転数を上げる】なんて、経営努力?は、
したくない…
しかし!)
せっかく来て下さったご近所の会社様の。
長年の常連的な、お客様がたが。
こう混んでちゃ、昼休み、ムリかぁ…と、
近隣他店に流れていく…のは、
放置するにも忍びない。
(他店は大喜びだったが。)
…ので。
とりわけ長っ尻するお客様が多かった、
窓際の一等地の、通称『おハイソ席』を…
申し訳ないが、ちょっとずつずらして、
分散させて。
混んでいるのに、当たり構わぬ大声で、
下品な長話に夢中になる中高年カルチャーおばさんズとか。
コーヒー一杯で、原稿?を書き始める老齢の売れない?作家さん??とか。
注文すらしないでスマホやパソコンを打ち続ける迷惑不客とか…
だけは、
居心地が悪いように、させてもらった。
☆
その、あけたスペースに、屋内屋台?的なブースを出して。
『 テイクアウト専用! ケーキ屋サンド! 』
実は店舗の上の同一ビル内で製造できるケーキの量も、もはや限界だったので。
少し離れた、多少は地価の安いエリアに、別に工場を用意して。
百貨店や大手スーパーに卸す分の日持ちのする焼き菓子類と。
食パンとコッペパンとクロワッサンは、そこで焼くことにして。
サンド列に並んだお客様には、素早く注文端末を渡す。
そこで「う~ん、う~ん、悩む~☆」と、うなり始めたお客様は、やんわりと待機場所に流して。
「お決まりのお客様、お先にどうぞ~!」
…という、係を1名、増やしただけで、飛躍的に客さばきが上がった。
『お決まりの』常連客たちは、端末を渡されるなり、
すでに決めてきた注文ボタンをぽちぽちぽちっ!と、
素早く押しながら、受け取り列に移動する。
・食パン6枚切りを2枚
・特製いちごジャム
・大盛
とか、
・クロワッサン2つ
・1 生クリーム
・1 ハチミツ
・量ひかえめ!
とか、そんなんだ。
素早く並んで、素早く受け取り、素早く支払い…
で、美味しい軽食が、さくさく手に入る!
てことで、これまでは店の前で諦めては引き返していた客数を、かなり回収できた♪
さらに。
『セルフサンドセット』1割引き!
とか。
色々、工夫して…
回転率を、上げて。
そして。
☆
爆発的なヒット商品となったのは。
『 ままよ! レドネーズ 』サンドであった。
食パン2枚(厚さはお好みで!)に、
・特製ママレード(秘伝の香!)
・特製マヨネーズ(朝どれ卵!) を、
・超!特盛!あいがけ!
するのであるが……………
【 禁断の味! 】と…
絶叫があがったw
「少し焦げた食パンの、
たちのぼるバターの香りと!
ママレードのオレンジの芳香と!
マヨネーズの…
コクが!
コクがぁぁぁぁッ!」
「 ダイエットの敵! 」
「憎い! 今日も食べてしまったッ!」
「太った~ッ! 絶対アレのせいッ★★」
連日のように、WEB上を飛び交う…
大量の、呪詛と怨嗟の声w
…に、関係スタッフは、してやったりw
…と、ほくそ笑んだ。のだが…
(そして、お買い上げスタンプ点数ごとに、
『 ダイエットコース 割引券! 』が。
もれなく配布、
されるという、おまけ展開がついたが…)
あっという間に。
行列が、長く、長く、長~く!
伸びてしまって…
(…あれ?)
…混雑緩和が、目的だったはずじゃ…??
と。
経営陣は、また、首をひねるハメになった…。
☆
===============
No Food, No LIFE.
『 F.F.S. 』‐ Foods Fights Spinoff ‐
霧樹 里守 (きりぎ・りす)
現実世界
食 / 食事 / 食物 / 料理 / 調理 / 人 / 職人 / 店
文量:軽め / 連載中 全7話
2023-05-04 09:17 更新
===============